軽音連大阪結成4年目の'98の冬の顧問会議の席で、 連盟顧問の宮本秀彦氏(NPO団体APM Network代表、元ビジュアルアーツ専門学校音響科)から、 「高校生の音楽活動をライブ以外でも支援しましょう」という提案がありました。 ライブでの演奏力、表現力が一定の域に達したバンドに、 次に要求されるのがオリジナル曲の創作力。 この年のスプリングフェスティバルで、オリジナル曲を発表できたバンドに ご褒美としてレコーディングに参加できるという有難い企画が始まりました。 夏休みのスタジオに一日中篭り、ヘッドフォンでモニターしながら、 ガラスの向こうのエンジニアと向き合って演奏するという、 ミュージシャンさながらの貴重な体験の結果、 この年、シリーズ第1作目となるオムニバスCD『98 HIGH SCHOOL LIVE』が誕生しました。 CD企画がきっかけとなり、 軽音連の活動の『オリジナル曲のすすめ』という柱の一つが立ち上がることになります。
応募バンドは年々増えつづけ、'03よりオムニバスCDのクオリティ向上を目指し、 6月中~下旬頃に、オーディションライブによる審査制度を導入。
ライブ審査に通過したバンドは、 7月下旬にプロのプロデューサーによるクリニックとアドバイスを受けた後、 8月上旬にレコーディングが行われることになりました。 このオーディションライブ審査制の導入により、CD企画は新たな段階へと踏み出すことになります。
'05からは、オーディションライブ形式から ビジュアルアーツ専門学校講師+複数の顧問によるスタジオオーディションに変更。 ライブパフォーマンスでは分かりにくい「楽曲の良さ」をより確実に審査し、 できあがるCDの作品性を高めるための改善でした。
'10には、軽音連大阪加盟クラブの増加に伴うエントリー数の激増に対応するため、 スタジオオーディション審査から、映像審査に変更されました。 この変更により、気になる部分を何回でも再生できることから、 『楽曲の良さ』と『個々のエントリー曲の差異』がより鮮明に把握でき、 また、『バンドの演奏力・表現力』も具体的に把握できるようになり、 より厳格で公平な審査が可能となりました。
CDの制作は容易ではありません。 オリジナル曲を創り、それを熟成して練り上げ、やがて録音に至ります。 ある程度録音が進行した段階で、今度は完全に別作業であるジャケットデザインや歌詞カードの制作。 現在、軽音連では加盟各クラブに対して『オリジナル曲を創ること』を奨励しています。 その意味から、すべてのオリジナル曲をCD化するのが本来ではありますが、 予算や時間の関係上、年間1枚リリースとしています。 では、そこまでの流れを順に…。
ある程度の楽器演奏の技量を習得する、あるいはさまざまなジャンルの音楽に触れるために プロアーチストの楽曲をコピーカバーして演奏することは、軽音楽部部員としての活動の基本となるものですが、 さらにその1つ先のステップとして、「自作曲を創作して発表する」という段階があります。 軽音楽部連盟大阪では、自作曲創作を奨励するために次のような取り組みを実施しています。
オムニバスCDを入手して聴く機会、先輩たちの自作曲に触れる絶好の機会になっています。
冒頭の「まつり」(武庫荘総合)はダンサンブルで熱気あふれるナンバー。「2.5次元イケメンに出会えた奇跡。」(枚岡樟風)はライブでよく披露されていたが、 スタジオ録音ならではの工夫や隠し味が満載である。 「Silent Signal」(桜塚)はキャッチーなメロディが印象的な1980年代風サウンド。ボーカルの歌唱力が良く生かされている。 イントロのギターリフが印象的な「I see the light」(佐野工科)もボーカルの表現力が個性的である。 「レーゾンデートル」(金剛)はサビのメロディが印象的なスローナンバーである。 「旅ノウタ」(金岡)はこの年の大阪城大会でも好評だった親しみやすい楽曲。 個人的には2016年盤は現役の軽音楽部員には絶対オススメである。収録楽曲のレベルはかなり高いと思う。 ラウドでハードなナンバーこそ見当たらないのだが、さまざまなタイプのサウンドを聴くことができる。 ジャケットや歌詞カードにミスがあるのは残念であるが、収録曲の印象度は非常に高いことは間違いない。
1曲目と2曲目はバンドサウンドを前面に出したラフなロックである。 1曲目の「恋愛過去形」(枚岡樟風)は、この年、いろいろな演奏会で聴く機会があったガールズ3人バンドによるエモーショナルな楽曲。 2曲目「パーマネントデイズ」(都島工業)は遊び心ある歌詞にも注目だ。 「bitter chocolate」(泉陽)は一転して、女子の可愛さを前面に出したメロディラインの印象的な曲。 4曲目「Take a Walk」(上宮太子)はリズミカルで大人の雰囲気がある心地よい楽曲。 7曲目「約束」(工芸高校)は優しいボーカルの声に癒される楽曲。 こういう曲は高校生はなかなか創らないのでぜひ参考にして欲しい。 9曲目「AGEHA」、10曲目「Vivid」、11曲目「アマノジャク」は、それぞれのバンドの所属クラブの個性が垣間見えてきて大変興味深い。 最後は優しいバラードで終わる2013年盤。オムニバスであるから、アルバムとしての統一感はもちろん無いのではあるが、お好みの1曲がきっと見つかるはずである。
東日本大震災があったこの年、音楽を普通に楽しめる環境に居ることの幸せを誰でもがかみ締めた。この年のCDでは次の4曲を是非とも聴いて欲しい。 「にて」(柴島)はアコースティックギターとピアノのサウンドが印象的な曲。アレンジも素晴らしい。 「別華」(鶴見商業)は当時、いろいろなライブで注目を浴びていたボーカルが作詞した楽曲。高校生離れした歌唱力に脱帽である。 「お天気お姉さん」(上宮太子)と「The Planet of Monkey」(桜塚)の2曲は、どちらも味のある男子ボーカルが印象的。 歌詞もユーモアのセンスに溢れており、一度聴いたら忘れられない魅力がある。 こういった、絶対にプロアーチストには作れないような作品が聴けるのも連盟CDの魅力である。
2010年盤には歌詞や曲コンセプトが個性的な楽曲が揃っている。 1曲目のThe space age(toe copain 柴島) は宇宙人、 5曲目の終わりなきタケノコ。(タケノコis good。泉陽)は何とタケノコがテーマ。 1曲目の夢現(検定交雑 樟蔭フォーク)は文語調の歌詞がとても斬新な印象である。 輝(あいつら 汎愛)は今でも高校生にカヴァー演奏されることが多い名曲だ。 全体的にはアコースティックギターを前面に出したブリティッシュ風サウンドの楽曲が目立つ。 オムニバスアルバムならではのバラエティさに富んだ 1枚。
この年は6月に軽音楽部連盟大阪が大きく関わっている 「大阪城GIG」の記念すべき第1回が大阪城野外音楽堂で開催された。 新しい流れを感じさせる1年となったが、 この2008年盤もそんなエネルギーを感じさせる充実したラインナップである。 カナブーンの「雨と夜行列車」の切なさ、もりもりマシーンの「反実仮想」の静かな迫力、 Joyの「手遊びの夜」の不思議な世界観。 ボーカルの魅力が堪能できる1枚だ。
住吉商業のRun fools 5 の「空」で始まるこのアルバム。 遂に連盟オムニバスCDも10枚目。 お世辞ではなく、どなたにも聴いて欲しい仕上がりになった。 2年連続収録のダル☆メシアンも昨年とは趣の違うマイナー調ハードロック。 羽曳野高校の「月光」はプロミュージシャンからも高い評価を受けた佳作。 柴島の「苺戦争」はマネの出来ない劇的な展開の楽曲。 物議をまきおこした顧問バンドの「MONKEY TOWN」まで一気に聴けてしまう。 一家に一枚ぜひ。
年々、参加希望バンドが増えてくるにつれて、オーディションを通過して CD収録にこぎつけたバンドの楽曲が充実してきているのを実感する1枚。 住吉商業が3曲、柴島が2曲収録。 その他のバンドはこの年の連盟の行事のなかでは その名を良く知られたバンドばかりである。 中でも和泉総合のダル☆メシアンは全員2年生にもかかわらず 見事オーディションを通過し1曲収録された。 JACK(金剛高校)は、シンリジィを彷彿とさせるスリリングなロック。
この年から住吉商業フォークソング部が加盟し、CD制作にも3バンドが見参。 噂通り、1曲目の「べっぴんさん」で強烈なインパクトを与えてくれた。 CD全体的にはロック色がかなり強いサウンドイメージである。 収録曲は11曲と少ないが、その分一気に聴けてしまう1枚。 顧問バンドの「伝説の速球王」が誤植で「伝説の送球王」となっているのはご愛敬。
連盟発足10周年を記念した豪華ジャケット盤。 バラード、パンク、ハードロックなど多様なサウンドが散りばめられた名盤。 楽曲的に印象に残るナンバーが多く、 連盟のカバーライブにおいてもよく他校のバンドがカバーしている曲も多い。 ボーナストラックの顧問バンドの「英語でGO!」も珠玉の名曲。 ダレた曲の無い1枚。 連盟のことを知りたい方に自信を持ってお薦めします。
『We are Slipper Ages』 というタイトルから中身をイメージできる人は少ない。 「昼間はただの高校生・・・」というキャッチコピーに半ば騙され この1枚を手にした人は幸運である。 わずか60分と言う時間の後に 裸足にスリッパを履いた感触を想起させられたとしたら、思う壺である。 ジャケットデザインからブックレットの隅々まですべてを刷新した 『ハイスクールライブ』シリーズの第6作目。 オーディションライブ通過バンドのみエントリーが許された、 大阪発!奇蹟のスーパーオムニバスアルバム。
シリーズとしては5作目だが、オムニバスCDと言うより アルバム的オリジナルCDとしての仕上がり。 高等学校軽音楽部連盟もいろいろな意味で節目の年と言われた2002年。 1曲、1曲の仕上がり以上にこだわっているのが曲順。 15!通りある中からこれ以上ないという順が、自ずと聴く人を次の曲へと誘う。 1曲目を聴くと2曲目、3曲目へ、4曲目へと・・・・・ とうとうラスト曲まで、と聴きたくなること受けあい。 演奏力、表現力では間違いなく前作を凌ぐ作品。 "いてまえサウンドてんこ盛り"1曲目から一気にテイストしてみてください。
『ミックスバンド大会』(学校の枠を越え、無作為抽選による一過性のバンドを結成、表現力を競い合う) という奇想天外な企画を仕掛ける 高等学校軽音楽部連盟が送るシリーズ第4作目。 今回はスプリングフェスティバル時にたまたま結成された 『ミックスバンド』のひとつがオリジナル曲に挑戦、 レコーティングにも参加するという記念すべき1曲も含め、 シリーズ史上最多の19曲を収録。 評判を聞きつけた神奈川県軽音楽部連盟と交流を持つきっかけとなった作品としても有名である。
この年のスプリングフェスティバルでステージ発表された高校生バンドオリジナル曲集の第3作目。 今回はアレンジャーの古川健次氏より丁寧なアドバイスを頂戴して どの曲も仕上げにこだわっている。 車椅子の詩人、岸本康弘氏作詩の曲『明日は』をバンドプレイヤー全員で大合唱、 高校生達に負けじとクラブ顧問の先生達による特別参加曲あり。 オムニバスCDと言うより、高等学校軽音楽部連盟が送る、 巷で囁かれている「いまどきの17才」へのアンチテーゼという意味深い作品である
2年目のジンクスとはよく言ったものだ。 やっつけ仕事の第1作と異なり、無難な曲作りという点がやけに気になる作品。 それともバブル崩壊という時代背景が生み出した癒し系音楽なのだろうか。 高校生の感性が優しさや謙虚さだけに収束されていくのには、 大人社会の歪を感じざるを得ない問題の第2作目。 特に男子高校生の影が薄いのも気がかりだ。 この1枚を聴いて、安心と不安の両方またはどちらか一方を感じることに…。
『ハイスクールライブ』を主催してきた高等学校軽音楽部連盟が、 新たなる試みを開始した記念碑的アルバム。 ライブで鍛えられた高校生バンドが次に掲げた目標が『オリジナル曲づくり』。 ビジュアルアーツ専門学校大阪の全面協力を得て、 個性溢れるオリジナル14曲を収録したオムニバスCDを発表。 そのほとんどが、大胆にも一発録りのため、粗さも目立つが、新鮮さや純粋さも満載。 ジャケットデザインの高校生による手作り感が、一層10代の未熟さを懐古させる。 一聴の価値あり!
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